# 日本の木で、日本の家具を。国産材への回帰が、いま家具業界で起きていること。
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家具キノクニヤ店長
2026年6月、飛騨高山で毎年開催される「飛騨の家具フェスティバル」に参加してきた。各メーカーのブースを回るなかで、あることに気がついた。どこも、木材の話をしていた。
素材へのこだわり。なぜその樹種を選んだのか。どこの山から来た木なのか。テーマが共通していた。そしてその多くが、国産材への取り組みについての話だった。
「国産家具なのに、木は外国産」。これが長年の業界の実情だった。それがいま、変わり始めている。
国産家具を買う人の多くは、「日本で作られた家具だから、木も日本産だろう」と思っているかもしれない。実際にはそうではないことの方がが多い。
家具に使われる広葉樹——ナラやタモ、ウォールナットなど——の多くは、北米やヨーロッパ、ロシアからの輸入材です。理由はシンプルで、輸入材の方が安定していたからだ。質が揃っていて、いつでも一定量が手に入る。家具をつくり続けるメーカーにとって、これは死活問題に近い条件だった。
日本は国土の約7割が森林に覆われた、森の多い国だ。にもかかわらず家具用の木材を輸入に頼ってきた背景には、戦後の歴史がある。戦中に大量の木が伐採されて国産材が枯渇し、その後は輸入材に切り替わった。広葉樹の流通ラインが一度途切れると、それを再構築するのは簡単ではない。飛騨地域においても、1970年代までは地元の広葉樹を使って家具を作っていたが、その後は輸入材への依存が続いた。

輸入材が「悪い材料」ということではない。品質や扱いやすさという点では、むしろ輸入材の方が優れている面もある。ただ、「日本の木が、日本の食卓や椅子になっていない」という状況が長く続いていた。
転換のきっかけは複数重なった。
まず、輸入材の価格高騰だ。コロナ禍を起点にした世界的な木材需要の逼迫、いわゆる「ウッドショック」。そこに海上物流費の高止まりと円安が加わり、ナラ材の輸入単価はこの4年で6割近く上昇した。ロシアが木材輸出を制限したことも追い打ちをかけ、これまで品質・コストともに定評のあったロシア産のナラ・タモ材が一気に使いにくくなった。
次に、環境意識の変化だ。輸送距離が長ければCO₂排出量も増える。地元の木を使えば輸送エネルギーを大幅に削減できる。これがサステナビリティの観点からも評価されるようになった。
そしてもう一つ、「枯渇したはずの国産広葉樹が、実は山に蓄積されていた」という事実だ。流通の仕組みが整っていなかっただけで、木そのものは日本中にある。問題は「届ける仕組み」の側にあった。
当店のすぐ近く、飛騨市古川に「株式会社やまかわ製材舎」という会社がある。代表の及川幹さんは、もともと地域おこし協力隊として飛騨市に移住し、「広葉樹コンシェルジュ」として活動。2024年4月に自ら製材所を立ち上げた人物だ。企業理念は「木の文化の落ち穂を拾う」。製材・乾燥・流通という川中の機能を担うことで、山にある木と家具をつくる工場をつなごうとしている。
私も直接話を聞き、現場を見せてもらって腑に落ちることがあった。「木がない」のではない。「届く仕組みがない」のだ。広葉樹は針葉樹に比べて硬く重いため伐採・搬出が難しく、製材・乾燥にも手間がかかる。木こりという仕事は体力的に過酷で危険も伴い、担い手も少ない。山の木が家具になるには、伐採・搬出・製材・乾燥・流通という工程のそれぞれに専門の人間が必要で、そのどこかが欠けると木は届かない。

飛騨市では、市をあげて「広葉樹のまちづくり」に取り組んでいる。川上(山・林業)・川中(製材・乾燥)・川下(家具メーカー・販売店)をつなぐ取り組みが、少しずつ形になってきている。
家具キノクニヤ店長
飛騨の家具フェスティバル2026のオープニングトークセッションで、飛騨産業の岡田明子社長がこんな話をしていた。「近い将来、国産材の使用比率を30%まで引き上げることを目指している」と。大きな目標だが、すでにその実現に向けた取り組みは動いている。

飛騨産業はすでに、国産材を前面に打ち出したシリーズを展開している。
「風のうた」は、希少な国産ナラ材を使い、木の節をそのままデザインに活かしたシリーズだ。節は通常、品質上の欠点として避けられることが多いが、このシリーズでは「限られた資源を余すことなく使う」という思想のもと、節を個性として取り込んでいる。まるで一枚板のような表情をもつテーブルが特徴的で、ダイニングからリビングまでトータルにそろえられる。
「kinoe」は、笠木に木の枝をそのまま使った、より自然の形に近いシリーズ。スギ・ヒノキの枝、クリ、ブナと複数の国産樹種を使い、木製家具としては軽量に仕上げられている。どちらも完全な国産材仕様だ。
さらに飛騨産業は、奥飛騨温泉郷に新工場を設け、地域資源である温泉熱を使った木材乾燥設備を導入している。国産広葉樹の乾燥時間を短縮し、安定供給を可能にするための設備投資だ。岐阜県産材を中心に、国産材の活用を本格的に増やすための基盤整備が進んでいる。

当店では「風のうた」「kinoe」どちらも取り扱っています。飛騨産業の家具について、詳しくはこちらからご相談ください。
福岡県朝倉市に工場を構えるナガノインテリアも、国産材への取り組みを加速させている。注目したいのが2つの動きだ。
一つ目は、クリ(栗)材の採用。クリは日本人が縄文時代から建材として使ってきた、歴史の深い国産広葉樹だ。耐久性・耐水性に優れ、乾燥後は弾力性に富んで狂いが少ない良質な材として知られる。ナガノインテリアでは全シリーズにわたってクリ材での製作が可能で、当店はその対応ができる取扱店の一つとなっている。「ウォールナットやオークではなく、日本の木で作りたい」という方に、具体的な選択肢として提案できるようになった。
二つ目は、クス(楠)の採用だ。2025年のミラノサローネ(世界最大の家具見本市)で、ナガノインテリアは宮崎県産のクスを使ったスツール「COUPÈ(コッペ)」を発表した。九州のメーカーが、九州で育った木を使い、世界に向けて発信した。
クスノキは漢字で「木」に「南」と書く。西日本、特に九州を主産地とする常緑広葉樹で、御神木として神社に植えられることも多い木だ。天然の樟脳を含むため独特の香りがあり、防虫効果でも知られる。「九州の工場で、九州の木を使う」という文脈がここに生まれている。
ナガノインテリアの国産材(クリ材)対応や詳細については、こちらからお気軽にご相談ください。
国産材への転換で最も先を走っているのが、北海道旭川のカンディハウスだ。2014年に「ここの木の家具・北海道プロジェクト」を立ち上げ、当時8%以下だった道産材の使用比率を、2024年には約80%まで引き上げた。10年で10倍という、家具業界では異例のスピードだ。道産ナラ・タモを主力にしつつ、ニレ・セン・サクラといった新樹種の活用も進めており、他のメーカーにとっても一つのモデルケースになっている。
「国産材だから良い家具」「輸入材だから劣る家具」ということにはならない。素材の良し悪しは産地だけでは決まらないし、長年輸入材を使ってきたメーカーには、その素材を使いこなすための深い技術と経験がある。
それでも、国産材への注目が高まっている理由はある。
日本中に森はある。木はある。でもそれが家具になるためには、伐る人、運ぶ人、製材する人、乾燥させる人、加工する人が必要だ。その連鎖のどこかが細くなると、木は山で朽ちるだけになる。家具として国産材を使うことは、その連鎖を太くすることに直結している。
食の世界で「地産地消」という言葉が当たり前になって久しい。家具の世界でも、同じ意識が少しずつ広がり始めている。日本の山で育った木が、日本の職人の手を経て、日本の家庭の食卓や椅子になる。その流れが、いまようやく動き始めた。
お客様に椅子を選んでもらうとき、これまでは「座り心地」「デザイン」「素材」が重要だった。そこに作り手の想いや、商品ならではのストーリーを載せて届けることが、専門店の仕事だと思ってきた。
これからは、そこに「素材の産地」という新たな切り口が加わるのではないかと感じている。この木はどこで育ったのか。その山はどんな場所で、誰が木を伐り、どんな製材所が板にしたのか。家具屋としてはその家でどう暮らすか、何を大切にするか——暮らしそのものをデザインすることが今後重要になるのだと思っている。素材の産地という新しい色が加わるこれからの時代に、その会話をもっと豊かにできる家具屋でありたいと、強く思いました。

