「浜本工芸はダサい？」幅広い世代に支持される理由と誤解の背景

家具キノクニヤ店長

「浜本工芸はダサい？」といった声を耳にすることがあります。しかし、家具屋としての経験から、それは誤解にすぎません。実際には幅広い世代に愛され続ける魅力を持つブランドです。なぜそのような誤解が生まれるのか？本記事では、その背景と浜本工芸が支持される理由を家具屋の視点からお伝えします。

「浜本工芸はダサい？」と言われる背景とは

家具の街、広島で1952年に設立された浜本工芸は1980年代頃から品質の高さから全国の家具店にも広まり、多くのファンがいる日本を代表する総合家具メーカーです。無垢材、特にナラ材やオーク材の家具にこだわり、学習机やダイニングセット、ソファが強い老舗メーカーです。

当店でも古くから扱いのある浜本工芸の家具は悲しいかな「ダサい」と言われることがあります。そう感じる方がいるのは事実ですが、実はそこには理由があります。

理由のひとつは、その高い耐久性にあります。浜本工芸の家具は数十年使い続けることができるため、家庭で目にするのは昔のデザインや塗装色が多いのです。特に、かつて人気だった浜本工芸特有の深みのある濃い茶色の塗装（現在はダークオークという塗装色）は購入から数十年経ち深みがさらに増し、現在の若い世代には「懐かしい」または「古臭い」と映ることがあります。

また無垢材を贅沢に使い、丸みのあるシンプルでやさしいデザインが長い時を経て、若い方からは懐かしいと同時に少し野暮ったく感じるのかもしれません。しかし、何十年も前の家具が今も多くの家庭で使われているのは、浜本工芸家具が長く愛されてきた家具の証であり、「ダサい」と誤解されやすい部分でもあるのです。

幅広い世代に支持されるからこそ、売場で感じる懐かしさ

浜本工芸が全国的に売れ始めたのは1980代～90年代。その当時に買った方は今は60代や70代になっています。60代・70代の世代には昔ながらの落ち着いたテイストの家具が根強い人気を誇ります。一方、若い世代には、モダンなデザインや明るい塗装色の家具が支持されています。

浜本工芸を扱う家具店は大型の総合家具店であることが多く、昔ながらのデザインから最新の家具まで展示していることが多いです。幅広い世代に愛されるからこそ、浜本工芸の売り場を見た若い世代の方はロングセラーのシリーズを見て「懐かしさ」、またはある種の「ダサい」という誤解が生じるのかもしれません。

浜本工芸の進化：デザインとトレンドの変化

浜本工芸は、伝統を守るだけでなく、時代に合わせた進化も遂げています。近年では、トレンドを反映した新しい塗装色や、現代的な形状の家具が続々と登場しています。顕著なのは塗装色です。かつてはほぼすべての家具が「ダークオーク」でしたが、現在は「ナチュラルオーク」「カフェオーク」が新たに加わり、こちらのほうが多く選ばれています。

2025年新春の展示会ではフレンチオーク(フランス産のオーク材)にプレミアムオーク色という木肌に近く、やや白っぽい塗装のダイニングテーブルが展示場に大々的に展示されておりました。

また、外部デザイナーとコラボレーションした家具は、シンプルで洗練されたデザインが特徴です。これにより、従来のファンだけでなく、若い世代からも注目を集めています。これまでインハウスでデザインをすることが多かった浜本工芸ですが、2024年の新作NO.7000は濱西邦和氏をデザイナーに迎え、注目されています

デザインだけでなく、異素材(金属)の脚や黒やグレイの塗装色などライフスタイルの変化に合わせて進化しています。

変わらない品質と価値

進化し続ける一方で、浜本工芸が守り続けているものがあります。それは、天然木を贅沢に使用した高品質な家具作りです。職人による丁寧な仕上げと、環境にも配慮した素材選びは、どの世代からも支持される理由です。浜本工芸の方とお話すると口をそろえて皆さんが言うのは「これだけの材料を使い、この品質で、この価格は自信がある」という点です。