「国産家具」と書いてあるのに、使われている木はアメリカ産のウォールナット。カタログをよく見ると、オークもアメリカ産、チェリーもアメリカ産。これって、おかしいのではないか。
結論から申し上げると、矛盾でも偽装でもありません。制度上、まったく正しい表示です。
ただし、「国産の木でつくられた家具」というのは、それとは別に確かに存在します。そして今、その数が静かに増えはじめています。この記事は「国産家具と輸入家具、どちらがいいか」という話ではありません。国産家具に使われている“木”そのものの話です。国産家具を売ってきた立場から、業界の実態を数字とともに、できるだけ正直に書きながら今後起きそうな予測と家具屋としての予想を含めて書いてみたいと思います。
家具キノクニヤ店長
結論:「国産家具」に、木の産地は関係ない
まず、いちばん大事なところから。
日本には「国産家具表示認定」という制度があります。一般社団法人 日本家具産業振興会が運営しているもので、認定された家具には「国産家具マーク」を表示できます。
その認定基準に、こう書かれています。
「ものづくりの一切を日本国内で行っています。ただし原材料を除きます。」
(日本家具産業振興会「国産家具表示認定の基準」より)
ここが核心です。「原材料を除く」と、はっきり明記されている。
では木について何が求められているかというと、同じ基準の中に、こう書かれています。
「合法木材(違法伐採ではない木材)を使用し、地球環境の保全に努めています。」
求められているのは「違法に伐られた木ではないこと」であって、「日本の木であること」ではありません。産地が国内であることは、要件になっていないのです。
つまり、こういうことです。
国産家具 = 日本でつくられた家具
国産材の家具 = 日本の木でつくられた家具
ちなみに国産家具表示認定の基準は、木材のことだけを見ているわけではありません。JISに準拠した安全性、ホルムアルデヒド放散量が最も少ないF☆☆☆☆の材料を使うこと、修理に対応できること、PL保険に加入していること──こうした項目が並んでいます。「日本国内で、責任を持ってつくられた家具かどうか」を見る制度であって、木の産地を保証する制度ではない、というのが正確な理解です。

でも最近、「国産材の家具」が増えている
制度の話をすると硬くなるので、先に実物の話をさせてください。
ここ数年、店頭で「これは日本の木です」とご案内できる家具が、明らかに増えました。10年前は、聞かれても答えられる商品がほとんどなかったのです。
飛騨産業には「国産材限定」のシリーズがある
飛騨産業には「国産材限定商品」という括りがあり、ナラ・カバ・クリの3樹種が用意されています。同じかたちの椅子でも、輸入材でつくるか国産材でつくるかを選べる、という考え方です。
ほかにも、同社には国産材に関わる製品がいくつもあります。
- KISARAGI──柾目のスギを55%まで圧縮した、圧縮スギの家具。スギは本来やわらかい木ですが、圧縮することで家具に使える硬さにしています
- kinoe──これまで使い道のなかった木の「枝」を使うシリーズ。国産のクリやブナが使われています
- 風のうた──日本の四季に育まれた美しい木目のナラ材を用いて、職人が丹精込めてつくり込んだ「風のうた」シリーズ。節や色合い、木目の表情など自然の魅力が人気のシリーズ
ナガノインテリアは、クリ材に力を入れている
もうひとつ、国産家具の主力メーカーで国産材に力を入れているのがナガノインテリアです。特に栗(クリ)材に力を入れています。
クリは、日本人にとってなじみの深い木です。線路の枕木や家の土台に使われてきたほど水と腐りに強く、それでいてオークより軽い。木目もはっきりしていて、和にも洋にもよく馴染みます。
当店は正規販売店として、ナガノインテリアの主要シリーズをクリ材で製造していただくことができます。これは取り扱えるお店が限られており、「同じかたちで、木だけ国産に変える」という選び方ができる数少ない例です。
産地でも、動きが出ている
メーカー単位だけでなく、産地としての動きも出てきました。
北海道の旭川家具では、国産広葉樹の利用率がこの10年で3割から8割へと大きく上がっています。また2025年11月には、私たちの地元・岐阜県高山市に、木材流通に関わる官民の関係者およそ70人が集まりました。国産広葉樹をどう家具に活かすかを話し合う場です。
飛騨と旭川という、日本の家具産地の二大産地が、そろって国産広葉樹のほうを向きはじめている。これは10年前にはなかった景色です。
……と、ここまで景気のいい話を並べてきましたが。
こうした動きは、まだ全体のごく一部です。どのくらい「一部」なのか。数字を見ると、正直、驚きます。
数字で見る「家具の木」の実態
木材自給率42.5%──ただし、中身がある
日本の木材自給率は42.5%です(2024年/林野庁「令和6年 木材需給表」2025年11月公表)。
この数字だけ見ると「4割は国産なのか、思ったより多いな。食料自給率と比べたら、良いじゃないか」と感じるかもしれません。実際、1960年ごろまでは木材需要のほとんどが国産材でまかなわれていましたが、その後の輸入自由化で下がり続け、2002年には18.8%まで落ち込みました。そこから見れば、42.5%は確かに持ち直した数字です。
ただ、この42.5%には中身があります。
| 用途 | 自給率(2024年) |
|---|---|
| 建築用材等(製材・合板) | 52.9% |
| 非建築用材等 | 36.5% |
| 全体 | 42.5% |
自給率を押し上げているのは、家を建てるための木です。家具の木は、この「建築用材等」には入っていません。
国産の丸太は、93%が針葉樹
もう少し踏み込みます。日本国内で生産される丸太を樹種別に見ると、こうなります。
| 樹種 | 生産量 | 構成比 |
|---|---|---|
| スギ | 1,208万㎥ | 60.2% |
| ヒノキ | 302万㎥ | 15.0% |
| カラマツ | 169万㎥ | 8.4% |
| エゾマツ・トドマツ | 124万㎥ | 6.2% |
| 広葉樹 | 137万㎥ | 6.8% |
(林野庁「森林・林業統計要覧2025」令和5年値)
国産の丸太の93%は針葉樹。広葉樹は6.8%しかありません。
ここが決定的です。ダイニングテーブルや椅子に使われるナラ、タモ、ウォールナット、チェリー、ブナ、カバ、クリ──これらはすべて広葉樹です。日本でたくさん採れるスギやヒノキは針葉樹で、家具の主役にはなりにくいのです。

家具に回る国産広葉樹は、わずか4.3%
さらに、その6.8%の中身を見ます。
日本の広葉樹の需要は年間およそ2,400万㎥。これに対して国産の供給は約250万㎥で、おおよそ1割です。ではその250万㎥がどこへ行っているかというと──
| 用途 | 量 |
|---|---|
| 木材チップ(紙の原料など) | 161万㎥ |
| おが粉 | 34万㎥ |
| しいたけ原木 | 19万㎥ |
| 木炭 | 15万㎥ |
| 薪材 | 6万㎥ |
| 製材等(家具・内装に使える分) | 8.6万㎥ |
(林野庁「里山広葉樹をめぐる状況」令和7年12月)
国産広葉樹の4.3%しか、家具や内装に回っていません。残りの大半は、チップになっています。
私たちの地元でも同じことが起きています。飛騨市で伐採された広葉樹の94%は、安価なチップとして市外へ出ていっているという調査結果があります。家具の産地の足元で、家具になれるはずの木がチップになっている。これが実態です。
農研機構も「家具・内装材メーカーは輸入広葉樹材に8割以上依存している」とはっきり書いています(2025年)。
あの飛騨産業でも、使う木の約80%以上は外国産
この話を、いちばん象徴的な数字でお伝えします。
飛騨産業は、自社サイトでこう公表しています。
2023年現在の国産材使用率は14%ですが、2030年には30%を目指しています。
飛騨の家具といえば、国産家具の代表格です。そして飛騨はその土地の90%以上が森林の「ド田舎」です。木は目の前にたくさんあるのです。その飛騨産業でさえ、使う木のほとんどが外国産。これは怠慢ではありません。ここまで見てきた数字が示す通り、日本には家具に使える広葉樹がほとんど流通していないのです。使いたくても使えない。構造の問題です。
そして重要なのは、その飛騨産業が自らこの数字を公開したうえで、「2030年までに製品売上の30%を国産材製品にする」という目標を掲げていることです。
なぜこうなったのか──戦後の森づくりが残したもの
人工林は70年で倍増した。ただし中身はスギ・ヒノキ
日本は国土の約7割が森林という、世界でも有数の森林国です。それなのに家具の木がない。この矛盾の答えは、戦後の森づくりにあります。
戦後の復興と高度成長で木材の需要が急増したとき、国は成長が早く建材に向くスギ・ヒノキを大量に植えました。人工林の面積は1949年の約500万haから、現在は約1,009万haへとほぼ倍増しています。
そして、その中身がこれです。
| 樹種 | 人工林に占める割合 |
|---|---|
| スギ | 43.8% |
| ヒノキ | 25.5% |
| カラマツ | 9.5% |
| 3種の合計 | 78.8% |
(林野庁「森林資源の現況」令和4年3月31日現在)
人工林のおよそ8割が、この3種類。すべて針葉樹です。私たちの世代が受け取った森は、家を建てるための森であって、家具をつくるための森ではなかったということです。

広葉樹はある。でも「材」になりにくい
ここで、ひとつ意外な事実があります。
面積で見れば、日本の森林の約46%は広葉樹です。天然林にかぎれば、その83%が広葉樹。決して少なくない。むしろ、たくさんあります。
それなのに、なぜ家具にならないのか。林野庁や農研機構が挙げている理由は、こういうものです。
- 少量多樹種──いろいろな木が少しずつ生えていて、同じ木をまとまった量そろえるのが難しい
- 径が細く、曲がりが多い──天板が取れるような太くまっすぐな木が少ない
- 製材所が少ない──広葉樹を挽ける製材所自体が限られ、地域に偏っている
- 品質基準がなかった──針葉樹と違い、用途に応じた等級のものさしが整備されていなかった
10脚の椅子を同じ色味でそろえたい、というのは家具屋にとって当たり前の要求ですが、木がバラバラで、太さもバラバラで、挽ける工場も限られていると、それがとたんに難しくなります。
森はあるのに、家具の材がない。ひとことで言えば、そういうことです。
輸入材が悪いわけではない
ここまで読むと「国産材が少ないのは残念なことだ」と感じられるかもしれません。ただ、家具を売ってきた立場から言うと、輸入材が選ばれてきたのには、きちんとした理由があります。
同じ木を、同じ品質で、必要な量そろえられる
日本が輸入している広葉樹の丸太は、その6割以上がアメリカ産です。樹種の内訳はホワイトオーク50%、メープル27%、ウォルナット16%(2025年/林野庁)。
アメリカの広葉樹は、産地も等級のものさしも確立しています。だから「このグレードのホワイトオークを何立方メートル」と発注すれば、色味も木目も硬さも、ばらつきの小さいものが届く。テーブル1台と椅子4脚を並べたときに違和感が出ない、というのは、この安定があってこそです。
乾燥と加工が安定している=反り・割れが出にくい
無垢材の家具でいちばん怖いのは、納品したあとの反りや割れです。これは木の乾燥がうまくいっているかどうかで、ほぼ決まります。

長年扱われてきた樹種には、その木をどう乾かせばいいかというノウハウが蓄積されています。産地から工場までの流れも安定している。「安心して10年20年使える」という一点で、輸入材には確かな実績があります。
10年後に、買い足しや修理ができるか
これは店頭で本当によくあるご相談です。「子どもが増えたので、同じ椅子をもう1脚追加したい」「天板を張り替えたい」。5年後、10年後にそう言っていただくことは、決して珍しくありません。
飛騨産業は年間およそ4,000件の修理を受けているそうです。長く使う家具というのは、それだけ「あとから手を入れる」ことが前提になっている。そのとき、同じ木が10年後も手に入るかどうかは、とても実務的な問題です。流通量の多い樹種のほうが有利で安心なのは間違いありません。一枚板や希少材は、後から同じものを足すのが難しい。これは国産・輸入にかかわらず言えることです。
ですから、この記事は「輸入材をやめて国産材にしましょう」という話ではありません。どちらにも理由があり、その理由を知ったうえで選べたほうがいい、という話です。
それでも、いま国産材が増えていく理由
ここまでの話をまとめると、「日本には家具の木がない。だから輸入材を使う。それには合理性がある」となります。実際、この構図は何十年も変わりませんでした。
ところが、この2〜3年で潮目が変わってきています。理由は3つあります。
①制度:2025年4月、家具が法律の対象になった
これがいちばん大きい変化です。
「クリーンウッド法」という法律があります。違法に伐られた木材が流通しないようにするための法律で、その改正法が2025年4月1日に全面施行されました。
改正のポイントは2つです。木材を扱う川上の事業者に、木の出どころを確認することが義務づけられたこと。そしてもうひとつ、対象となる品目に「椅子、机、棚」が追加されたことです。
つまり家具が、法律の対象になった。これまで「木の出どころ」は業界の中だけの話でしたが、これからは記録し、伝えることが求められます。一定規模以上の事業者には報告義務もあり、その第1回の期限は2026年6月末でした。
出どころを把握しなければならなくなれば、把握しやすい木──つまり近くの木を使う動機は、確実に強まります。
②政策:スギを伐って使う流れが、国策になっている
意外なところから追い風が吹いています。花粉症です。
国は、花粉の発生源となるスギ人工林を2033年度までに約2割減らし、2053年度頃には半減させるという計画を立てています。そして伐ったスギを無駄にしないよう、スギ材の需要を2033年度までに年1,710万㎥まで拡大するという目標もセットになっています。
スギの使い道を国全体で探している状況です。飛騨産業が圧縮スギの技術に長く投資してきたことが、ここで効いてきます。
③供給:ウッドショックとロシア材で、「当たり前」が崩れた
3つめは、外側からの事情です。そしてこれが、業界の意識をいちばん変えたと思っています。
2021年のウッドショックを覚えている方も多いと思います。コロナ禍でアメリカの住宅需要が急増し、世界中で木材の奪い合いが起きた。日本の木材価格は、こうなりました。
| 品目 | 2021年12月の価格 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 製材品 | 80,149円/㎥ | +106% |
| 集成材 | 107,247円/㎥ | +114% |
| 合板 | 77,556円/㎥ | +51% |
(林野庁 令和3年度 森林・林業白書)
1年で価格が2倍を超えたのです。木そのものだけでなく、運ぶコストも跳ね上がりました。2021年12月のコンテナ海上運賃は、米国発が前年同月比1.5倍、欧州発が1.9倍。
ウッドショックの主役は住宅用の木材でしたが、家具業界も無縁ではありませんでした。当店でも各メーカーからの値上げのご案内が相次ぎ、「いま買っておいたほうがいいですか」というお問い合わせを何度もいただきました。「木はいつでも、同じものが同じ値段で手に入る」という前提が、このとき初めて崩れたのです。
そして翌2022年4月、日本はロシアからの木材チップ・丸太・単板の輸入を禁止しました。あわせて最恵国待遇を撤回し、製材の関税を4.8%から最大8%へ引き上げています。
④そして、いちばん大きいのは「為替」
じつは、ここまでの3つよりも影響が大きいものがあります。円安です。
ウッドショックの木材価格は、その後ピークから下がりました。スギの正角(乾燥材)は2022年1月の104,100円/㎥から2026年6月には77,900円/㎥へ、針葉樹合板も2,330円/枚から1,750円/枚へと落ち着いています。数字だけ見れば、騒動は終わったように見えます。
ところが、輸入材を買う私たちの実感は、まったくそうなっていません。理由はこれです。
| 2021年1月 | 2026年6月 | 変化 | |
|---|---|---|---|
| 1米ドル | 103.57円 | 159.69円 | +約54% |
| 1ユーロ | 126.44円 | 185.23円 | +約46% |
(林野庁「モクレポ」令和8年7月号/税関長公示レートの平均値)
この5年半で、円はドルに対して5割以上安くなりました。どういうことか、いちばんシンプルに言うと、こうです。
アメリカで100ドルの木材を買うとき──
2021年1月なら 10,357円
2026年6月なら 15,969円
木の値段が1ドルも上がっていなくても、円で払う額は5割以上増えている。
ウッドショックは一時的な高騰で、価格は数年で戻りました。でも円安は戻っていません。重要なのは、国産材はこの為替の影響を受けないということです。日本の木を、日本の製材所で挽いて、日本の工場で家具にするなら、そこに為替は関わりません。
これまで国産広葉樹は「量がまとまらない」「割高になりやすい」という理由で選ばれにくい素材でした。ところが輸入材のほうが5割高くなったことで、その価格差が以前ほど大きくなくなってきている。環境や思想の話ではなく、単純な採算の問題として、国産材を検討するメーカーが増えているのが実情です。
ウッドショック、ロシア材、そして円安。この5年で3回、「輸入に頼りきることのもろさ」を業界は経験しました。足元に木があるのに使えていない、という状態を放っておく理由が、だんだんなくなってきているのです。
▶ 参考:ウッドショックは飛騨の家具にも影響ある?値上げや買うタイミングについて
国産材も、手放しでいいわけではない
ここまで国産材が増える理由を書いてきましたが、「国産材ならなんでもいい」というほど単純な話ではありません。売る側として、ここは正直に書いておきたいところです。
スギ・ヒノキは、やわらかい
木の硬さのめやすになる「気乾密度」で比べると、こうなります。数字が大きいほど、詰まっていて硬い木です。
| 樹種 | 気乾密度 | 主な用途 |
|---|---|---|
| スギ | 0.38 | 建築材 |
| ヒノキ | 0.44 | 建築材 |
| ヤマザクラ | 0.62 | 家具 |
| ブラックウォールナット | 0.63 | 家具 |
| ブナ | 0.65 | 家具(曲木) |
| ミズナラ | 0.68 | 家具 |
(『木材工業ハンドブック 改訂4版』森林総合研究所監修)
スギはミズナラの半分ちょっとの密度しかありません。やわらかいということは、傷がつきやすいということです。ダイニングテーブルの天板にスギをそのまま使うと、フォークを落としただけで跡が残ります。
飛騨産業がスギを圧縮する技術を長年かけて開発したのは、まさにこの弱点を克服するためでした。国産材を家具にするには、ひと手間かかるのです。
「国産材だから環境にいい」とも言い切れない
「国産材を使えば日本の森が元気になる」とよく言われます。ただ、それが成立するのは伐ったあとにきちんと植え戻されている場合だけです。林野庁自身が、伐採後に植え直される割合は約4割にとどまると課題に挙げています。植える費用が木を売った収入を上回ってしまうためで、地域差もかなり大きい。
かといって「伐らなければ森が守られる」わけでもありません。いま全国で広がっている「ナラ枯れ」は、太くなりすぎた木ほど被害を受けやすいと言われています。使われないまま放置されて枯れていく木もある、ということです。
つまり国産か輸入かというラベルだけで、環境への良し悪しは決まりません。その木がどう育てられ、伐ったあとどうなるか。本当はそこまでが一体の話です。
価格が安いとは限らない
最後に、いちばん現実的な話を。
「近くで採れる木なら安いはず」と思われがちですが、そうとは限りません。量がまとまらず、挽ける製材所も限られ、選別の手間もかかる。結果として、国産広葉樹のほうが割高になることは珍しくありません。
国産材を選ぶというのは、いまのところ「安く買う」選択ではなく、「そういう木を選ぶ」という選択に近いのが実情です。
いま買うなら、どこを見ればいいか
では実際に「木の産地」を気にして家具を選びたいとき、何を見ればいいのか。整理しておきます。
マークや表示が保証していること・していないこと
| 表示 | 意味すること | 意味しないこと |
|---|---|---|
| 国産家具マーク | 日本国内で製造されている | 木が国産であること |
| 合法木材 | 違法伐採材ではない | 木が国産であること |
| FSC・SGEC認証 | 適切に管理された森林の木 | 木が国産であること |
| 樹種名+産地表示 | 木の出どころそのもの | ─ |
見るべきは、いちばん下の「樹種名と産地表示」です。「オーク材」とだけ書かれていれば、それは高い確率で北米産のホワイトオークかレッドオーク。「ナラ材」と書かれていても、国産のミズナラとは限りません。
なお森林認証について補足すると、国内でFSC認証を受けた森林は約42万ha、SGEC認証は約220万ha。日本の森林2,502万haに対して、合わせて1割ほどです。認証材は「あるけれど、多くはない」というのが正確なところです。
お店で聞くとよい、質問
- この木は、どこの国の木ですか?
この質問にパッと答えられるか。メーカーも1つ1つの木の産地を公表しているわけではないので、応えれないこともあると思います。ただ「このメーカーのオークは北米産が多い」とか「このメーカーは今フランス産のものを使っている」とか「北米と中国を使っている」などある程度応えれると、木の産地への興味や理解度が分かります。
答えられないお店が悪いというより、そこまで踏み込んで聞かれることが、これまでほとんどなかったというのが実情です。
これから、「どこの木か」は家具を選ぶ基準になっていく
ここからは、家具屋としての見立てを書かせてください。
実はもう、あなたも日本の森にお金を出している
ご存じでしょうか。2024年度から「森林環境税」の徴収が始まっています。
住民税に上乗せするかたちで、1人あたり年額1,000円。全国から集められたお金は森林環境譲与税として自治体に配られ、森の整備や担い手の確保、木材の利用促進に使われます。2024年度の配分額は629億円にのぼります。
つまり、日本に住んで住民税を納めている方は、すでに全員が日本の森にお金を出しているということです。
ただ、この話をお客様にすると、ほとんどの方が「知らなかった」とおっしゃいます。私も最初はそうでした。知らないうちに払っているだけなら、それはただの税金です。でも「自分も出しているのなら、その森の木を使ってみたい」と思う方は、これから確実に出てくると思っています。
食べ物で起きたことが、家具でも起きる
20年前、スーパーで野菜の産地を確認する人がどれだけいたでしょうか。魚の漁獲地、卵の生産者、コーヒー豆の産地。いまでは当たり前に目に入ります。
「どこで採れたものか」を気にすることは、いつのまにか特別なことではなくなりました。意識が高いから見るのではなく、書いてあるから見る。それだけのことです。
家具は、野菜よりずっと長く付き合うものです。10年、20年、下手をすると一生使う。それなのに、木の産地はほとんど語られてきませんでした。

そして先ほど書いた通り、制度のほうが先に動きました。2025年4月、椅子や机がクリーンウッド法の対象になった。木の出どころを記録し、伝えることが業界の仕事になった。表示や説明が増えれば、目にする人が増える。目にする人が増えれば、気にする人が増える。食べ物とまったく同じ順番です。
「どこの木か」を知ることは、長く使うことと地続き
店頭に立っていて感じることがあります。
木の出どころをお伝えしたお客様は、その家具への向き合い方が少し変わります。天板の色ムラや小さな節を「傷」ではなく「この木がどう育ったか」として見てくださるようになる。
そうなると、多少の傷では買い替えません。手入れをして、直して、長く使ってくださる。そして長く使うことが、環境負荷という点ではいちばん効果が大きい。国産か輸入かという議論より、たぶんずっと大きい。
「どこの木か」を気にすることの本当の価値は、そこにあると思っています。
ただし、「国産材だから買う」ではないと思っています
ここは、はっきりさせておきたいところです。
国産材だからいい家具、ということはありません。正確に言えば、いい家具に、たまたま国産材という選択肢が増えていく。順番はそちらです。
座り心地がいいか。部屋に合うサイズか。予算に合うか。10年後に直せるか。家具を選ぶ順番は、これまでと何も変わりません。国産材はその上に乗る、もうひとつの物差しにすぎません。

そのうえで「同じくらい気に入ったなら、国産材のほうを選ぼうかな」と思える方が少しずつ増えていく。その程度の話といえば、その程度です。えそれでも、新たな選ぶ基準が増えたことは、選ぶ・暮らす楽しみの1つにきっとなります。
だから当店も、国産材の家具を増やしていきます
私たちは飛騨高山で60年以上、家具を売ってきました。目の前に飛騨の山があり、その木の94%がチップとして出ていくのを見ている立場です。

この流れに乗るというより、流れをつくる側にいたいと思っています。国産材の家具がご提案できる場面を、少しずつ増やしていきます。
具体的に、いまどんな家具が国産材で買えるのか。次の記事で、実際の商品をご紹介します。
よくあるご質問
Q. ウォールナットやチェリーは国産ですか?
ほぼすべて輸入材です。家具に使われるウォールナット(ブラックウォールナット)とチェリー(ブラックチェリー)は北米産が中心で、日本には自生していません。日本が輸入する広葉樹丸太の6割以上がアメリカ産で、その内訳はホワイトオーク約50%、メープル約27%、ウォルナット約16%となっています(2025年/林野庁)。
Q. 「ナラ材」と書いてあれば国産ですか?
いいえ。ナラは英語でオークにあたり、家具では北米産のホワイトオーク・レッドオーク、あるいはロシア産のナラが使われていることが多くあります。国産のミズナラは流通量が少なく、希少です。国産かどうかを知りたい場合は、樹種名だけでなく産地までご確認ください。
Q. 国産材の家具は高いですか?
安いとは限りません。国産広葉樹は量がまとまりにくく、挽ける製材所も限られ、選別に手間がかかるため、かえって割高になることもあります。「近くの木だから安い」という考え方は当てはまりにくいのが実情です。
Q. 「合法木材」とはどういう意味ですか?
違法に伐採されたものではないと確認された木材のことです。クリーンウッド法(合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律)にもとづく考え方で、2025年4月に施行された改正法では木材関連事業者に合法性の確認が義務づけられ、対象品目に椅子・机・棚といった家具が追加されました。ただしこれは「違法ではない」ことの確認であり、国産材であることを意味するものではありません。
まとめ
「国産家具」という言葉に、木の産地は含まれていません。制度としてそう定められていますし、そもそも日本には家具に使える広葉樹がほとんど流通していません。家具や内装に回る国産広葉樹は、全体のわずか4.3%。使いたくても、そこに木がないのです。輸入材が選ばれてきたのにも、品質の安定や10年後の買い足しといった、きちんとした理由がありました。
ただ、その前提がこの5年で揺らぎました。ウッドショック、ロシア材、そして何より円が5割以上安くなったこと。制度と経済の両方から、同じ方向に力がかかっているのが、いまという時期です。とはいえ国産材も万能ではありません。スギはやわらかく、価格も安いとは限らず、「国産だから環境にいい」と言い切れるほど単純でもない。そこは正直に申し上げておきます。
そのうえで、私たちは「どこの木か」を気にする方はこれから確実に増えると考えています。ただそれは意識の高い選択ではなく、木の出どころを知るとその家具を少し大事に思えるようになる、という程度の話です。傷や色ムラが、欠点ではなくその木の履歴に見えてくる。結果として長く使う。私たちが国産材の話をしたいのは、突き詰めればそこに理由があります。
もちろん、国産材だからという理由だけで選んでいただく必要はありません。まずは座り心地やサイズや価格で選んでいただいて、そのうえで「同じくらい気に入ったなら、こちらは日本の木です」とご案内できる。そういう店でありたいと思っています。
あわせて読みたい
- 国産家具とは?特徴と産地、日本の家具マークについて
- ホワイトオーク vs レッドオーク|色・価格の違いと選び方
- 国産広葉樹 クリ(栗)材を使った国産家具について
- 国産家具の塗装について〜ウレタン・オイル・蜜蝋・ソープ仕上げ〜
- 【飛騨産業】kinoeシリーズ〜木の枝を使った商品の特徴〜


